統合シミュレーション設計手法を用いた核融合炉用加熱装置の開発 ┃ 株式会社Helical Fusion┃SCCJ 2025

発表概要

核融合反応を起こすためには、プラズマと呼ばれる高温ガスを1億℃を超える温度まで加熱する必要がある。この加熱は、原理的には電子レンジと同様に、電磁波をプラズマ内の電子に照射し、電子サイクロトロン共鳴という現象を利用して行われる。加熱装置の基本構成はすでに開発済みで、従来の核融合実験装置にも導入実績がある。
当社では現在、CSTを用いた加熱装置の設計基盤を確立しつつある。この設計技術の革新により、従来では困難とされていた設計最適化や、量産を前提とした仕様策定が可能となってきた。三次元設計技術の進化とハードウェア計算能力の向上という「技術的転換点」を迎えた今、当社は核融合装置の重要な要素である加熱装置の量産設計に挑んでいる。

 

PDFファイル

 

発表者

金田 健一 様

研究開発部門・加熱システム チーフ・リサーチャー - 株式会社Helical Fusion

電磁界・熱・構造・荷電粒子の軌道解析といったマルチフィジックスシミュレーションを活用した加速器の研究開発に15年以上従事している。特にCST Studio Suiteを用いた高周波機器や加速器コンポーネントの設計・製作経験は10年以上に及び、新規製品開発や技術課題の解決に豊富な知見を有している。専門分野は加速器工学および電磁場解析であり、近年は核融合分野への応用として、電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)装置の設計開発にも取り組んでいる。加速器と同様の高周波技術やビーム・プラズマ制御が求められるこの領域において、既存の知見を活かした設計最適化や量産対応が可能である点に強い関心を持つ。2013年から2017年には株式会社エーイーティーに在籍し、電磁界解析ソフトウェアの技術サポートに加え、同ソフトを活用した加速器の設計・製作を担当した。